木質バイオマス発電は何年で元が取れるのか

木質バイオマス発電で電力を自給自足するのに必要な費用では木質バイオマス発電の建設に最低でも10億円必要だと紹介しました。

今回は、木質バイオマス発電の建設費、維持費、売電収入などを計算し、元を取るのにかかる期間を計算します。

発電出力5,700kWなら19年

株式会社FTカーボン「小規模木質バイオマス発電設備の採算性」では、発電出力5,700kWと1,500kWの木質バイオマス発電の建設費、維持費、売電収入などがシミュレーションされています。

計算方法

年間の発電量は

年間の発電量(kWh/年)=発電出力(kW)×24h×365日×設備利用率

で計算できます。

設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を木質バイオマスの標準である80%と想定すると、年間発電量は発電出力5,700kWの場合が3994万5600kWh、1,500kWの場合が1051万2000kWhです。

そして、木材の調達価格を発電出力5,700kW の場合で12,000 円/トン、発電出力1,500kW の場合で9,000 円/トンとしています。

発電出力5,700kWと1,500kWを試算

また、売電価格を25円/kWhと想定した場合、木質バイオマス発電の収入と支出の関係は以下の表の通りです。

木質バイオマス発電の収支
発電出力 5,700kW 1,500kW
収入 売電
(25円/kWh時)
9億9864万円/年 2億6280万円/年
建設費補助 7億9000万円
(建設費の1/3)
3億1000万円
(建設費の1/3)
支出 建設費 23億7000万円 9億3000万円
廃炉費用 1億1850万円
(建設費の5%)
4650万円
(建設費の5%)
運転維持費 1億5390万円/年 9600万円/年
燃料費 7億2000万円/年 1億8000万円/年
燃料費の諸経費 3600万円/年
(燃料費の5%)
900万円/年
(燃料費の5%)

発電出力1,500kWでは年間支出>年間収入になるため、永久に元が取れません。

一方、発電出力5,700kWでは元が取れる年数をQとすると、次の式でQの値が導き出せます。

9億9864万円Q-(1億5390万円+7億2000万円+3600万円)Q=23億7000万円+1億1850万円-7億9000万円

計算するとQ=19.1年です。つまり、発電出力5,700kWの木質バイオマス初で円では約19年で元が取れることがわかります

元が取れるのは5,000kW以上

先ほど紹介しましたが、想定する木材の調達価格(9,000円/トン)と売電価格(25円/kWh)で計算すると発電出力1,500kWの場合では永久に元は取れません。

固定価格買取制度や電力自由化の影響で、木質バイオマス発電が国内で次々建設していますが、2,000kW以下の施設を建設されていない理由が納得できます。(一方、2,000kW以下でも木質バイオマスのガス化発電は建設されています。)

よって、電力販売だけで元を取ろうとするなら木質バイオマス発電は5,000kW以上が選択肢となります。実際に近年国内で建設されている木質バイオマス発電は5,000kW以上のものです。

50人以上の雇用を生み出す

「平成25年度 森林・林業白書」によれば、送電出力5,000kWの木質バイオマス発電所を稼働すると、発電所の運営で10人以上、原料供給を含めれば50人以上の雇用を生み出します。

自治体は雇用促進にかかる費用を抑えることができるため、若者の人口減少を止めたい田舎の自治体にはメリットがありますね。

木材は十分に足りる

木質バイオマス発電の問題点は、燃料である木材が永久的に入手可能かどうかです。

NHKクローズアップ現代「急増!バイオマス発電」によれば、木質バイオマス発電先進国のドイツでは

大規模な発電所が乱立し、原料を輸入しなければならないくらい調達が難しくなりました。それを予測できず最悪の事態に陥ったのです。

一方、日本では

国は大規模な発電所がすべて稼働しても、燃料に使うのは山に放置された間伐材の2割にしか当たらず問題はないとしています。

よって、日本では木材不足になる可能性が低いことがわかります。

チルチンびと広場「vol.12 ドイツに学ぶ」によれば、日本の森林率(国土面積に対する森林面積の割合)は67%ですが、ドイツの森林率は30%しかありません。日本の森林とは異なり、ドイツは全て木材生産のための森林です。

つまり、日本は建築や木工に使用する木材(いわゆる人工林)以外の木材を使えば、持続可能な木質バイオマス発電ができる可能性が高いです。

新たな建設は進む

現在では、森林の多い田舎の自治体を中心に木質バイオマス発電所の建設が進んできます。

また都会であっても、東南アジアなどの木材を利用する木質バイオマス発電所が沿岸に建設されています。

電気代が上昇すればするほど木質バイオマス発電所のメリットが増えるため、今後も国内でバイオマス発電産業が成長するかもしれません。