木質バイオマスガス化発電の採算性をシミュレーション

福岡県八女市の資料をもとに、木質バイオマスガス化発電の採算性をシミュレーションします。

黒字化するには熱利用が前提

福岡県八女市(やめし)の木質バイオマス発電に関する資料には、木質バイオマス発電や木質バイオマスガス化発電の採算性について分析されています。

この資料によると、「直接燃焼+蒸気タービン発電」「ガス化+ガスエンジン発電」「直接燃焼+小型蒸気発電+熱利用」の3ケースにおいて採算性をシミュレーションしています。

ケース1:直接燃焼+蒸気タービン発電

「直接燃焼+蒸気タービン発電」とは木質バイオマスガス化発電ではなく、木質バイオマス発電のことですが、下の表の通り3,000kW以下の発電能力ではすべて赤字になることがわかります

直接燃焼+蒸気タービン発電の採算
ケース1-1 ケース1-2 ケース1-3
条件 発電2,000kWを売電 発電2,500kWを売電 発電3,000kWを売電
事業費 11.4億円 13.5億円 15.5億円
採算 8640万円/年の赤字 7260万円/年の赤字 5460万円/年の赤字

木質バイオマス発電は何年で元が取れるのかで紹介しましたが、一般的な木質バイオマス発電で採算を取るには5,000 kW以上の発電能力が必要です。

ケース2:ガス化+ガスエンジン発電

次は木質バイオマスガス化発電で電気だけを売った場合、発電能力別の採算性をシミュレーションしたものですが、すべてのケースで赤字です。

ガス化+ガスエンジン発電の採算
ケース2-1 ケース2-2 ケース2-3
条件 発電500kWを売電 発電1,000kWを売電 発電2,000kWを売電
事業費 11.4億円 13.5億円 15.5億円
採算 2960万円/年の赤字 3350万円/年の赤字 2770万円/年の赤字

直接燃焼+小型蒸気発電+熱利用

最後に、主に蒸気の熱利用を目的とした木質バイオマスガス化発電の場合、すべてのケースで採算が取れます。

直接燃焼+小型蒸気発電+熱利用の採算
ケース2-1 ケース2-2 ケース2-3
条件 蒸気3.0t/h+発電50kWを売電(補助金なし) 蒸気3.0t/h+発電50kWを自家消費(1/2補助金) 蒸気3.0t/h(1/2補助金)
事業費 2.5億円 1.2億円 1.0億円
採算 2600万円/年の黒字 2680万円/年の黒字 2620万円/年の黒字

熱を有効利用しないと黒字化しない

木質バイオマスガス化発電の問題点は、熱を有効利用しないと黒字化できないことです。

年中熱を利用するのは入浴施設やハウス栽培施設であり、これらの施設を併設する必要があります。

導入する自治体は少ない

森林の多い田舎の自治体を中心に、木質バイオマス発電所の建設が進んでいる一方で、木質バイオマスガス化発電所の建設はほとんど進んでいません。

おそらく木質バイオマスガス化発電を導入しない理由は、売電だけで採算が取れないことが原因だと思います。黒字化できない以上、銀行も融資してくれません。

今後は技術開発が進んで、補助金なしでも黒字化できる木質バイオマスガス化発電が開発されることを期待します。